掲載日:2022年1月10日
執筆者:Johannes Strasser | Westernacher、SAP S/4HANA Finance & Business Process Intelligenceソリューションコンサルタント
今日のデジタル化社会の重要な推進力について考えるとき、アジリティとトランスフォーメーションがよく言及されます。アジリティはもはや当たり前、トランスフォーメーションはあり方ですが、競争優位性を持続させるにはカスタマーエクスペリエンスにも注目する必要があります。将来を見据えたビジネスリーダーたちは、競争や変化の激しいデジタル環境で先手を打つため、製品中心・効率優先のアプローチから顧客志向へとその視点を移しています。SAP Signavio Journey Modelerは、顧客と企業活動の関わりを理解、改善、変革するためのツールを提供し、カスタマーエクセレンスの持続的創出を可能にします。ただし、このソリューションの利点はカスタマーエクスペリエンスの継続的向上だけではありません。詳しく見ていきましょう。
SAP Signavio Journey Modelerとは?
包括的なSAP BPIスイートに含まれるSAP Signavio Journey Modelerは、プロセス変革を支援するソリューションのひとつです。このソリューションを活用することで、企業は自社のビジネスプロセスと顧客の実体験を結び付け、顧客体験の観点から自社のシステム、指標、役割を改善することで、最高のカスタマーエクスペリエンスを実現できるようになります。
SAP Signavio Journey Modelerは、美しいジャーニーモデルをすばやく簡単に設計し、それらのジャーニーモデルをSignavio Business Transformation Suite内で効果的に管理し、ジャーニーモデルをビジネスプロセスと結び付けるサポートを提供します。
ジャーニーモデル自体は、顧客、従業員、サプライヤー、その他の関係者など、外部からの視点を示します。この記事では、範囲を限定するため、顧客シナリオに焦点を当てていますが、ジャーニーモデルの基本的な考え方は同じです。ジャーニーモデルは、BPMNでマッピングされた従来のビジネスプロセスとは異なります。以下の表は、ビジネスプロセスとジャーニーモデルの違いを示しています。
| 文書化の対象 | ビジネスプロセス | カスタマーエクスペリエンス |
|---|---|---|
| 視点 | インサイドアウト | アウトサイドイン |
| 表現法 | プロセス図 | カスタマージャーニー |
| 推奨 ツール | SAP Signavio Process Manager | SAP Signavio Journey Modeler |
| ゲーム チェンジャー | インサイドアウトのオペレーショナルエクセレンスとアウトサイドインのカスタマーエクスペリエンスの実践を融合させ、ジャーニー、プロセス、データをしっかりと結び付け、顧客満足度を最大化する | |
企業のビジネスプロセスは、SAP Signavio Process Managerを使用してプロセス図で表現するのが最適です。一方、ビジネスプロセスの受け手であるカスタマーエクスペリエンスは、SAP Signavio Journey Modelerを使用してジャーニーとして表現するのが最適です。SAP Signavio Process Managerですでにモデル化されたビジネスプロセスは、SAP Signavio Journey Modelerにリンクすることができます。たとえば、プロセスモデルを特定の手順やタスクレベルでSAP Signavio Journey Modelerにマッピングすることができます。さらに、リンクされたプロセスはSAP Signavio Collaboration Hubで直接開くことができます。
カスタマージャーニーは、ジャーニーの各ステージを詳細に記述する表形式の構造で捉えることができます。これにより、すべてのタッチポイントのリストアップ、各ステージのセンチメントの可視化、プロセスマップのリンク、ウィジェットとしてのデータビジュアライゼーションの追加などが可能になります。これらのウィジェットは、SAP Signavio Process Intelligenceから直接組み込むことができます。
業務データや外部データをカスタマージャーニーと統合することで、改善機会を特定し、カスタマーエクスペリエンスの頂点に確実に到達することができます。カスタマーエクセレンスを実現するには、「インサイドアウト(内から外)」と「アウトサイドイン(外から内)」の思考を組み合わせることが重要です。つまり、どのビジネスプロセスに顧客とのタッチポイントがあるか、そして何よりも、顧客はそれらのタッチポイントをどう認識しているかを理解しなければなりません。こうした知見から、さまざまなメリットがもたらされます。
SAP Journey Modelerの利点
SAP Signavio Journey Modelerを活用すると、新たなカスタマーエクスペリエンスを業務に直接落とし込めるようになります。特定のビジネスプロセスにおけるカスタマーエクスペリエンスを定量化し、管理可能な情報に変換できるため、顧客の期待の変化にすばやく対応し、高い顧客満足度を維持できます。また、どの顧客に、いつ、どのように対応すべきかをより賢く判断できるようになります。
また、ビジネスプロセス、関連するITアプリケーション、統合ポイント、データフローをジャーニーとリンクさせることで、カスタマーエクスペリエンスを一元化し、リアルタイムで可視化できるようになります。企業は、重要な顧客成果の達成に向け、ジャーニー分析やセンチメント分析を活用して組織全体を調整できます。さらに、顧客センチメント、真実の瞬間(Moments of Truth)、および基盤となるプロセス運用の相互関係をより深く理解できるようになります。
既存のプロセス環境にも新たなチャンスが隠れています。SAP Signavio Process Intelligenceのプロセスマイニング機能を活用し、重要な顧客接点を特定できます。顧客データとプロセスマイニング分析から、顧客の不満や幸福感の根本原因を把握し、ビジネスプロセスを修正・再設計することで、顧客満足度、顧客維持度、そして顧客ロイヤルティを効果的に高めることができます。
さらに、カスタマーエクスペリエンスチームとプロセス管理チームの間にある壁を取り払い、ジャーニーモデリングの目標や定義において足並みを揃えることができます。これにより、業務の複雑さを最小限に抑え、プロセス運用のばらつきを管理し、組織全体で一貫したカスタマーエクスペリエンスを提供できるようになります。こうした知見を、SAP Signavio Collaboration Hubを使って組織全体で共有・クラウドソーシングすることで、さらに高いレベルのカスタマーエクスペリエンスを達成できます。
まとめ
SAP Signavio Journey Modelerは、あらゆる形態や規模の組織において、顧客、代理店、従業員が自社のビジネスをどのように体験しているかを可視化するためのソフトウェアソリューションです。顧客中心の要件とオペレーショナルエクセレンスを融合させ、ジャーニー、プロセス、データを強固に結び付けます。ビジネスプロセスと顧客体験を結び付けることで、カスタマーエクスペリエンスを業務に組み込み、競争優位性を確立するのに最適な方法を提供します。また、組織のシステム、指標、役割を調整して最適な顧客接点を特定したり、プロセスマイニングデータを深く分析してカスタマーエクセレンスにおける競争優位性を高めるのに役立ちます。さらに、「インサイドアウト」と「アウトサイドイン」の両方の視点からカスタマーエンゲージメントをより深く理解し、改善・変革を行い、カスタマーエクスペリエンスとプロセスマイニングを実際の業務に落とし込むことができます。顧客が本当に求めているものだけでなく、まだ気付いていないニーズも把握でき、顧客の満足度およびロイヤルティを高めることができます。SAP Signavio Journey Modelerは、SAP Signavio Business Transformation Suite、特に、SAP Signavio Process Manager、SAP Signavio Process Intelligence、SAP Signavio Collaboration Hubと連携させることで、その潜在力を最大限に発揮します。その中でも、SAP Signavio Collaboration Hubは企業全体での信頼できる唯一のプロセスを構築するための重要なプラットフォームです。
次の記事では、SAP Signavio Collaboration Hubを詳しく検証します。どうぞお楽しみに。
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