著しい成長を遂げる新興市場で活躍するOlam Agri社は、食品、飼料、繊維分野のリーダー的存在です。確かな専門知識、加工能力、グローバルな販売拠点を有する同社は、ナイジェリア全土での展開拡大を視野に入れ、2019年にDangote Flour Mills(DFM)社のフリート事業を買収しました。DFM社のフリート事業は、これまで堅実なビジネス成長を支えてきました。そこで、Mindsprint社とWesternacherと協力し、フリート事業に技術革新を取り入れ、業務戦略の見直しと変革に乗り出すことにしました。
効果
燃料管理、計画、最適化で利益率を約2~4%向上
逆物流での収益取りこぼしを0.5~1%に削減
燃料費を50万米ドル削減
フリートKPI一致率98%
収益一致率97%
DXでナイジェリアの道路問題に対応
Olam Agri社は、ナイジェリア全土でのフリート事業の拡大を目指していました。しかしナイジェリアでは、穴や段差など、整備されていない道路が多く見受けられます。そのため、車両の消耗が激しく、燃料も多く消費します。こうした課題に対処するため、フリート管理者は負の影響を緩和し、より効率的で収益性の高い業務に向けた戦略を立てる必要があります。
同社がナイジェリアで使用していたオフラインのフリート事業計画システムは、複雑かつ高度にカスタマイズされていたため、データに一貫性がなく、部門をまたぐプロセスの進行に問題が生じ、タイムリーな意思決定、ガバナンス、アクションを制限していました。そこで、生産性向上に向け、コスト配分を自動化し、システム主導のガバナンス制御を導入することにしました。また、以前は月末にかけて手直しが必要だったデータ入力も自動化することにしました。さらに、トラックおよびトリップレベルでの損益計算書の可視化にも取り組みました。
重要課題の解決に向け、MindsprintとWesternacherが手を組み、Olam Agri社のデジタル基盤を強化し、データに基づく意思決定、プロセスエクセレンス、デジタルコアとの統合を実現しました。
新システムで車両の可視性と収益性を向上
輸送チームが手作業で行っていたこれまでの計画プロセスでは、車両の稼働状況や利用可能なトラックの種類が可視化されていませんでした。十分な情報を入手できず、特に逆物流を扱うシステムがなかったことから、多くの収益機会を逃していました。
資産管理もまた、デジタル化の遅れにより多くの課題を抱えていました。たとえば、保守作業、スペアパーツの支給、資産履歴などの追跡が手作業で行なわれ、情報に基づく意思決定の妨げになっていました。
損益計算書(P&L)の作成も手作業であったため、時間がかかる上に正確性を欠いていました。また、各トラックに関するコスト(スペアパーツ、保守、人員など)をきちんと把握できていませんでした。逆物流の収益も追跡されておらず、収益取りこぼしの可能性がありました。燃料管理も不十分で、規制の遵守状況を監視して適切に運用するためのデータが不足していました。トラックの稼働状況についても把握されていませんでした。
インサイトを示すダッシュボードがなく、収益性の高い輸送経路や主要業績指標(KPI)が可視化されていませんでした。月次報告書もほぼ手作業で作成され、タイムリーな意思決定を妨げていました。また、Novatrackとトリップデータが統合されていなかったため、追跡および分析作業がさらに複雑化していました。
こうした課題を克服するには、包括的な輸送管理システムを導入し、業務の最適化、貴重なインサイトの入手、収益の最大化を行う必要がありました。
SAP S/4HANA TMSで物流業務を刷新
Olam Agri社は、SAP S/4HANA輸送管理システム(TMS)の導入に成功し、物流業務の変革を成し遂げました。現在、SAP S/4HANAのデジタル基盤を活用し、20の工場と4つの整備工場を効率的に管理しています。
SAP S/4HANAを基盤とする統合型のインテリジェントなアーキテクチャは、ITシステムの複雑さを軽減し、イベントの包括的な監視、KPIの可視化、レポート機能を通じて、データの透明性と正確性を向上させます。現在の業務課題を解決するだけでなく、逆物流や3PL統合といった将来の機能強化にも対応するワンストップソリューションです。
SAP S/4HANA TMSは、S/4コアとシームレスに統合し、DFM社のデジタルコアをECCからS/4HANAへ移行する際に付加価値を提供します。SAPの強みとして、直感的なUI、スケーラビリティ、効果的なユーザーアクセス管理が挙げられ、SAP S/4HANA、SAP ECC、SAP PI、BODS、Tableauなどの主要テクノロジーが使用されています。
SAP S/4HANA TMSの導入により、輸送チームと車両管理チーム間の車両の稼働調整において、人による作業が減りました。また、車両の年式や燃費を考慮した配車が行なわれるようになりました。さらに、すべての輸送プロセスをNovatrackと統合し、TMSのイベント管理機能を活用することで、故障コードなどの収益管理に関するデータをリアルタイムで収集できるようになりました。
また、スペアパーツの支給や、修理・保守に関連するコスト管理を効率化し、昨年調達した約400台のトラックに対して予防保全スケジュールを導入しました。すべてのトラックや設備を個別のコストセンターに紐付けることで、トラックおよびトリップレベルでコストや利益率が可視化できました。データ追跡が容易になったことで、トリップレベルでの正確な輸送費計算も可能になりました。
さらに、トリップレベルでのコスト仕分けの一括処理やトリップおよびトラックレベルでのコスト配分により、修理・保守コストを詳細に把握できるようになりました。走行距離に基づく燃料管理では、TMSとECCを緊密に連携させ、燃料使用状況を正確に追跡することで、年間50万ドル以上の燃料費削減が見込まれています。
自動レポート機能により、業務および財務管理が強化され、整備工場のコストと効率性を一目で把握できるようになりました。分析ダッシュボードは、業務全体を俯瞰し、例外をモニタリングして、情報に基づく迅速な意思決定をサポートします。
これらのダッシュボードにより、トラック1台あたりのトリップごとの1日の収益およびコストを把握し、業務レポートを参照して継続的な改善を推進できます。また、SAP TMSとNovatrackを統合したことで、トラックの状態をリアルタイムで一元管理し、計画走行距離と実際の走行距離を比較できるようになりました。さらに、イベント追跡機能で輸送に関連する重要なマイルストーンを記録できます。
最適なフリート業務モデルを確立
Olam Agri社にとってのゲームチェンジャーであるSAP S/4HANA TMSにより、同社は競争優位性を手にし、今後の課題にもスムーズに対応できる体制を整えました。今回のOlam Agri社のDXプロジェクトは、フリート業務の最適化で競争優位性を獲得したいと考える企業にとって興味深い事例ではないかと思います。
成果
燃料管理とコストの最適化
- 50万ドルのコスト削減
- 分析による燃料効率の向上
- 燃料の積み残し
- 年式と燃料効率に基づく戦略的な配車
効率性と管理の強化
- ドライバーの免許追跡の簡素化
- リアルタイムデータによるプロアクティブな意思決定
- データに基づく継続的な改善
- コストおよび効率に関する詳細な洞察
- 煩雑な調整作業の削減とデータアクセスの向上
- 効率的な貨物サービスに向けた利益ベースの最適化計画
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