「サプライチェーン」とは、原材料の調達から製造、流通、小売、そして最終顧客による購入に至るまで、製品を提供するための全プロセスを指します。今日、多くの企業がこのサプライチェーンの一部を担い、顧客のニーズを満たすことを最終目的として、多数のパートナーと連携しています。
一方、これまでのサプライチェーン管理では現代社会における消費者主導の要求に応えることが難しく、企業はより高度なデジタルサプライチェーンソリューションを求めるようになっています。そこで登場するのが、企業のサプライチェーン運営を再定義する次世代ERPシステムSAP S/4HANA Public Cloudです。
時代に合ったサプライチェーンソリューション
サプライチェーンはかつてないほど複雑化しています。サプライヤー、製造業者、販売業者、小売業者、顧客など、複数の関係者が関与し、流通網は世界中に広がっています。消費者が「より安く、より早く」商品を受け取ることを当然のように期待する一方で、企業はコストの増加、供給の途絶、政治的・経済的な不確実性、さらには持続可能性への対応といったさまざまな課題に直面しています。残念ながら、従来のレガシーシステムには、柔軟性、自動化、最適化、リアルタイム分析など、より俊敏で対応力のあるサプライチェーン管理に必要な要素が欠けています。
SAP S/4HANA Public Cloudは、あらゆる業務をエンドツーエンドで支援する、完全なクラウドベースのインテリジェントERPソリューションです。人工知能（AI）や予測分析などの最新技術を活用したリアルタイムの洞察により、実際のデータに基づく迅速な意思決定が可能になります。
サプライチェーン管理におけるSAP S/4HANA Public Cloudの利点
- リアルタイムの可視化と洞察
SAPのインメモリデータベース「HANA」を基盤とし、従来のディスクベースのデータベースよりも高速かつ効率的に大量のデータを処理できます。これにより、リアルタイムのレポート作成や、直感的に理解しやすい組込分析やダッシュボードの利用が可能となり、潜在的な問題を即座に特定して迅速に対応できます。
- サプライチェーンの俊敏性強化
調達、在庫管理、製造、販売、財務など、サプライチェーン全体を網羅する統合型ERPが、社内のさまざまな部署間でのコラボレーションやプロセスのハンドオフを容易にします。たとえば、営業チームが新たな需要を確保すると、製造計画担当者がそれを即座に確認し、生産スケジュールを立てたり、部品の在庫を確認したり、不足している部品の調達を購買部門に依頼することができます。また、これらすべてを数クリックで行うことができます。
- インテリジェントオートメーション
AI、機械学習（ML）、ロボティックプロセスオートメーション（RPA）などのインテリジェント技術を活用し、サプライチェーンにおける定型業務を自動化、効率化します。従業員は繰り返し作業から解放され、ビジネス価値の向上に直結する戦略的業務に注力できます。また、Situation Handling（状況処理）などのインテリジェントなモニタリングツールは、人の介入が必要な異常を検知して担当者に警告し、迅速な対応を促します。
- シームレスな統合
SAP Business Technology Platform（BTP）上のSAP Integration Suiteを活用し、ホワイトリスト化されたAPI、データ複製フレームワーク（DRF）、標準的な事前構築済み統合シナリオを使ってサードパーティとのシームレスな統合を実現します。これにより、関係者間の安全かつ信頼性の高いコミュニケーションが可能となり、サプライチェーン全体のコラボレーションと業務効率が向上します。
- スケーラビリティと柔軟性
モジュール型のクラウドベースERPにより、ビジネスの成長に応じて機能とデータベースリソースの両方を柔軟に拡張できるため、コストのかかる大規模なインフラ変更の必要がなくなります。また、年2回のアップグレードは主にSAPが管理するため、SAPのAIアシスタントであるJouleなど、最新技術をいち早く利用できます。
業界別ユースケース：SAP S/4HANA Public Cloudの活用例
小売・消費財
実店舗、ECサイト、モバイルアプリなど、消費者の購買手段はこれまでになく多様化しています。SAP S/4HANA Public Cloudは、これらすべての販売チャネルを統合し、一貫性のある価格設定、在庫情報の可視化、効率的な受注処理を実現します。
消費財市場は、季節、流行、そして地域や世界的な出来事の影響を受けやすく、需要が安定しにくいため、企業は在庫レベルのバランスを取り、在庫の過不足を避ける必要があります。AIを活用した需要予測は、利用可能なあらゆるデータを分析し、適切な商品を、適切なタイミングで、適切な場所に確保するのに役立ちます。
S/4HANA Public Cloud for Retailは、小売業特有のニーズに対応する追加機能を備え、小売店舗と配送センターの両方をカバーする統合型ソリューションを提供します。
製造
製造プロセスは複雑で、原材料の確保、半製品の準備、生産能力の調整など、多くの工程を連携させる必要があります。SAP S/4HANA Public Cloudは、原材料の自動バックフラッシュ、完成品の入庫処理、連産品や副産物の管理により、見込生産（MTS）または受注生産（MTO）ベースのディスクリート生産、プロセス生産、繰返生産をサポートします。
品質管理は製造プロセスに不可欠な要素であり、S/4HANA Public Cloudが廃棄物や不良品を正しく記録します。
自動車
自動車製造は、複数階層にわたる部品構成、ジャストインタイム（JIT）での供給要件、そして1つの工程での遅れが大きな混乱を招く連続生産ラインなど、かなり複雑です。SAP S/4HANA Public Cloudは、自社製造の半製品組立や外部調達部品の従属所要量を含むリアルタイムの生産スケジューリングを自動化します。さらに、インテリジェント技術が供給リスクやボトルネックを事前に検知するため、こうした問題に迅速に対処できます。
また、S/4HANA Public Cloud は補修部品業務も支援します。会社間のプロセスを自動化することで、現地で部品を調達し、補修部品が必要な倉庫へ効率的に供給できます。ディーラーネットワークと直接連携することもでき、緊急時の迅速な部品供給をサポートします。
SAP S/4HANA Public Cloudによるサプライチェーン管理の未来
SAP S/4HANA Public Cloudは、最新のクラウドベースERPを通じて企業のサプライチェーンを変革します。SAPが継続的に提供するイノベーションや技術革新を活用することで、業界のニーズを先取りし、よりスマートで効率的かつ柔軟なサプライチェーンを構築できます。
