効率的なヤード業務と適切にメンテナンスされた設備は、スムーズな物流とサプライチェーンのパフォーマンス向上に不可欠です。今回の記事では、SAP Yard Logistics(YL)とSAP Plant Maintenance(PM)を統合し、ヤード業務の合理化と設備の信頼性向上により大きなビジネス価値を生み出す方法を探ります。
SAP YLは、ヤード物流の最適化と管理を可能にし、業務の可視性と効率性を向上させます。一方SAP PMは、プラントの設備や機械を常に最適な状態に維持します。これら2つの強力なソリューションを統合することで、企業は次のようなメリットを得ることができます。
- 業務遅延の最小化:車両、クレーン、機械などのヤード設備が最善の状態で利用可能であることを保証し、物流の混乱を回避
- 設備ライフサイクル管理の向上:設備の監視および保全をプロアクティブに行い、予期せぬ故障を減らして設備運用の信頼性を向上
- リソース利用の最適化:保全スケジュールとヤード物流の需要を調整して設備の可用性を確保
今回は、SAP YLとSAP PMをシームレスに統合するプロセスを詳しく解説しつつ、企業がよりスムーズで回復力のあるサプライチェーンを実現し、リソース管理を改善してリスクを最小限に抑える方法を紹介します。
前提条件
基本的なヤード設定、ヤード構造、プラント保全設定がすでに完了していることを前提とし、統合プロセスに焦点を当てて解説します。
SAP YLの設定
PM作業指図コンテンツ構造のヤード番号および保管域タイプへの割当
保全タスクを適切なヤードロケーションとリンクし、スムーズで効率的な運用を実現します。
PM設備カテゴリのヤード番号への割当
特定のヤードロケーションの適切な設備と保全タスクをリンクすることで、保全タスクとその追跡を容易にします。
PM統合に関連するアクティビティタイプの設定
指定されたタスクが実行される際に、PMシステムとの統合が必要であるということを、SAP YLが認識する必要があります。
輸送単位名にアンダースコア(_)を含めることはできません。これは、PM側の設備名でアンダースコアがサポートされていないためです。
SAP PMの設定
SAP S/4HANA向けSAP YLの機能場所構成区分の作成
各設備の場所を特定し、必要なときに必要なメンテナンスを実施できます。
シナリオ
今回は、出荷鉄道輸送のシナリオに焦点を当てます。複数の鉄道車両からなる列車のチェックインおよび検査の際に、鉄道車両ユニットの1つが損傷しており、積載前に修理が必要であることが判明しました。この場合、SAP YLでPMに関連するタスクが作成されます。PM関連のヤードタスクがアクティブ化されると、対応するPM作業指図が自動生成されます。アクティブなPM関連のヤードタスクを確認すると、リンクされたPM作業指図がリリースされ、該当する輸送ユニットが指定の修理エリアに移動されます。この輸送ユニットは、SAP YLでロックされます。
PM作業指図が完了すると、輸送ユニットのロックが解除され、SAP YLのプロセスを続行できるようになります。
注意:PM関連のヤードタスクがキャンセルされた場合、リンクされたPM作業指図もキャンセルされ、削除フラグが設定されます。
実行
鉄道車両がすでにヤードにチェックインされ、検査を待っている状態からスタートします。
検査中に、鉄道車両ユニットが損傷しており、製品の積載に適さないことが判明します。ヤードオペレーターは質問票から適切な選択肢を選び、タスクを確認します。
質問票の結果をもとにSAP PMに関連するアドホックタスクが作成され、アクティブ化されます。
タスクがアクティブ化されると、SAP PMで作業指図が生成されます。対応する通知はSLG1ログで確認できます。
生成された作業指図は、Fioriタイルの「Find Maintenance Orders(保全指図検索)」で見ることができます。
ヤードタスクが確定されると、鉄道車両ユニットは修理のために損傷車両保管エリアへ移動され、作業指図をリリースする通知がSAP PMに送信されます。
作業指図がリリースされると、ユーザーは作業指図に必要な詳細を入力し、タスクを作業員に割り当てる必要があります。これは、Fioriタイルの「Change Maintenance Orders(保全指図変更)」で行います。
作業員が鉄道車両ユニットの修理を完了したら、Fioriタイルの「Perform Maintenance Jobs(保全作業実行)」から作業完了の確認を行います。
その後、Fiori タイルの「Change Maintenance Orders(保全指図変更)」を使用して作業指図を完了します。
PM作業指図が完了すると、輸送ユニットのロックが解除され、SAP YLのプロセスを続行できるようになります。
鉄道車両ユニットを損傷車両保管エリアから移動させ、積載プロセスを再開できるようになります。
まとめ
SAP YLとSAP PMを統合することで、ヤードと保全の両方の業務を効率的に管理するソリューションを利用できるようになります。タスクの作成、作業指図の処理、設備の保全といった主要プロセスを自動化することで、ダウンタイムを最小限に抑え、業務効率を向上させ、設備利用を最適化できます。
この統合により、物流チームと保全チーム間の可視性と連携が強化され、リソース管理の最適化、タイムリーな保全作業、よりスムーズなオペレーションが実現します。出荷鉄道輸送の管理、保全作業の監視、または物流プロセスの最適化を目指す企業にとって、SAP YLとSAP PMの統合は強力なソリューションと言えます。
ソリューション導入についてのご意見・ご質問は、弊社までお気軽にお問い合わせください。今後も、SAPプロセスの最適化で業務を効率化するためのインサイトをお届けしますので、お見逃しなく!
