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IBPによる受注基準配給分配計画を軽視するリスク

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競争力を維持し、サプライチェーンを最大限に効率化するには、戦略的な配給分配計画が欠かせません。この部分をおろそかにすると、コスト増、顧客サービスの低下、さらにはサプライチェーン全体の非効率を引き起こす可能性があります。配給分配計画が重要である主な理由を以下に挙げます。

1. コストの削減

在庫を抱えることでコストが発生します。在庫を適切な流通センターに戦略的に配分することで、滞留在庫や在庫の陳腐化を防ぎ、保管コストと廃棄を削減できます。誰も必要としない製品で倉庫が埋まっている状態は、お金を捨てているようなものです!

2. 顧客満足度の向上

戦略的に配給分配計画を進めることで、必要なタイミングで必要な場所に在庫を用意できるようになります。これによりOTIF(On-Time In-Full)指標が改善され、顧客満足度が向上し、サプライヤーとの関係も強化できます。顧客満足度が高まるとリピーターが増え、自然と良い評判が広がります。

3. サプライチェーンの効率化

綿密な配給分配計画により、緊急受注の発生頻度が減り、資金の流動性を高まるため、販売予測の改善に集中できるようになります。混乱が減り、イノベーションとビジネスの成長のためにより多くの時間を費やすことができます。

SAP Integrated Business Planning(IBP)を活用した配給分配計画

配給分配計画は、サプライチェーン管理において非常に重要なプロセスであり、SAP IBP for Response & Supplyは、このプロセスを効率化する強力なツールを提供します。既存の在庫や供給をネットワーク全体に効果的に配分することで、サプライチェーンのパフォーマンスを大幅に向上させます。

配給分配計画は、新たに指図を作成することなく、既存の供給で需要を満たすことを目的としています。SAP IBPは、配給分配計画の重要性を踏まえた専用の計画実行プロファイルおよびアルゴリズムを提供します。このアルゴリズムは、既存の供給を活用して需要を満たすことに焦点を当て、効率的かつ効果的なプロセスを実現します。

次の図からも分かるように、在庫配給分配計画はIBPプロセスにおいて重要な役割を担っています。配給分配計画とは、供給と分配の販売事業計画(S&OE)プロセス内で日々起こる変化の出力です。この出力は、配給分配計画の要件に基づいて輸送積載の最適化を行う輸送積載計画プロセスでも活用されます。

要件に合った戦略

SAP IBPは、2つの配給分配計画アルゴリズム(有限ヒューリスティックとオプティマイザ)を備え、サプライチェーンの複雑さに応じて柔軟に使い分けることができます。

  • ヒューリスティックアルゴリズム:比較的シンプルなサプライネットワークに適しています。指図データと優先順位付けルールをもとに、分かりやすい供給計画を作成します。
  • オプティマイザアルゴリズム:より複雑なネットワークに適しています。指図データを日単位で集計し、さまざまな制約やコストルールを考慮して、コスト効率の高い供給計画を計算します。

ネットワークの複雑さや戦略的優先事項を考慮し、どちらのアルゴリズムが適しているか判断すると良いでしょう。ヒューリスティックは、理解しやすく導入も容易です。オプティマイザは、よりコスト効率の高いソリューションを実現します。

戦略的計画のためのアプローチとパラメータ

1. 分配可能プロファイル

  • 在庫転送がどの指図タイプに紐付けされるべきかを定義し、適切な供給在庫転送依頼を作成
  • 単一の汎用プロファイルを使用、または輸送の段階ごと(例:工場から各地域の流通センターへ、さらに各エリアの流通センターへ)に複数のプロファイルを使用
  • 在庫転送依頼がネットワーク全体で分配可能ステータスを伝播させるかどうかを決定

2. 切替可能な制約

  • 計画の段階に応じて、特定の制約を選択的に有効化または無効化(計画の初期段階で制約を適用し、後の段階で緩和など)
  • あらかじめ定義されたルールに基づいて制約のオン/オフを切り替えることで、探索的分析をサポート
  • 主要な切替制約
    • サプライヤー:特定の期間中にサプライヤーが納入できる量に上限を設定
    • 能力:利用可能なリソースの上限に基づき、生産・輸送量を調整
    • 割当:供給を複数の顧客に戦略的に配分
    • 最大入庫/所要量:在庫管理最適化のため、指図の上限を定義
    • ロットサイズ:指図に対して最小・最大・丸め値を定義
    • 計画開始:計画実行で「現在」とみなされる時点を設定し、早期の指図登録を防止
    • 確定期間:実行システムとの連携を容易にするため、供給計画をロックし、短期的な安定性を確保
3. 一般パラメータ
  • 期間:確定期間(暦日、稼働日、週、月など)を定義し、SAP IBPやS/4HANAなどの運用システムと連携
  • 供給元の優先度制限:優先度の低い供給元を除外して効率性を向上
  • 代替シナリオの優先度制限:代替シナリオを制限し、製品の打切、相互代替、販促用代替の管理を強化
  • 過剰在庫のプッシュ(有限ヒューリスティック):事前定義のしきい値を超える過剰在庫を在庫転送依頼を使って移動(港湾を非在庫拠点に設定するなど)
4. サブネットワークを使った計画
  • サプライチェーンネットワークを小さな計画単位に分割(アップストリーム/ダウンストリーム、地域別計画など)
  • ネットワーク内の各領域の計画戦略をローカライズ
5. 供給量割当を使った計画
  • 需要充足のバランスを取るため、供給量割当ベースの供給を適用
  • オプティマイザ:割当の配分を遵守してコストを最小化
  • ヒューリスティック:需要充足のバランスを取りつつ、割当バランスの改善を優先

ヒューリスティックベースの戦略的意思決定

1. 需要優先順位付けルール

  • 顧客、ロケーション、製品属性に基づいて需要充足の優先順位を定義
  • 紐付方針の決定:ジャストインタイム供給(充足の遅延)か、安定供給(早期の割当)かを選択

2. 需要均等配賦セグメント

  • 異なる顧客セグメント間で供給を公平に配分
  • 顧客の地域やその他の属性をもとに優先順位を設定

オプティマイザベースの戦略的意思決定

オプティマイザのコストと設定

  • コストベースの最適化から配給分配計画戦略を導き出す
  • 検討すべき主なコスト
    • 在庫コスト:過剰在庫に対してペナルティを課す
    • 輸送コスト:コスト効率の高い輸送手段を優先する
    • 遅延・未納コスト:需要充足の遅延や未履行にペナルティを課す
  • 均等配賦メカニズムにより、供給と安全在庫をバランス良く配分
  • 高度な設定でランタイム最適化を行い、複雑性と効率性のバランスを取る

アルゴリズムは最初の一歩

適切なアルゴリズムを選ぶことは、サプライチェーン最適化の一要素に過ぎません。サプライチェーンの競争力強化には、多岐にわたる戦術的な意思決定が求められます。SAP IBPの機能を最大限に活用することで、配給分配計画を細かく調整し、ビジネス目標を効果的に達成できます。

配給分配計画の戦略を立てる際には、まずビジネスプロセスを明確化し、配給分配の各設定とその影響を十分に理解することが重要です。シンプルな設定から始め、徹底的にテストを行い、ユーザーストーリーを活用してビジネス要件を整理します。

SAP IBPは、配給分配プロセスを効率化するさまざまな設定およびツールを提供します。また、IBP Planner Workspaceは、インタフェースの操作性向上のため定期的にアップデートされます。

カスタムアラートやダッシュボードなどの機能により、計画担当者は特定のシナリオに焦点を当て、統合されたビジネスデータを一目で確認し、変更を加えることができます。

2025年後半、SAPはIBP向けに新たな統合計画領域の提供を開始します。これにより、中~長期の需要・供給・在庫計画と、短~中期の供給計画を1つの領域として管理できるようになり、統合性と効率性の向上など、大きなメリットがもたらされます。

異なる供給分配計画戦略を組み合わせることは効果的ですが、まずはビジネスニーズやプロセスを十分に理解する必要があります。SAP IBPは、こうした戦略を支えるツールや柔軟性を提供し、より効率的かつ包括的な供給分配計画および輸送積載計画の実現をサポートします。

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