これまで長年にわたり、Y2K向けソリューションとして開発されたSAP APOが広く使用されてきました。今回新たに登場したSAP IBPは、次世代の統合ビジネス計画ソフトウェアとして、高度な機能とよりユーザーフレンドリーなインタフェースを提供します。
APOとIBP
SAP環境におけるサプライチェーン計画には、主に次の2つのツールが使用されます。
- SAP APO(Advanced Planning and Optimization)
- SAP IBP(Integrated Business Planning)
以下の図が示すように、IBPのローンチ以降、SAPはAPOシステムの開発を中止し、新しいプラットフォームに新機能(AI機能や高度なアルゴリズムなど)を導入しています。
APO製品のサポートは終了しつつあり、SAPはAPOスイートからIBPへの移行を奨励しています。
SAP IBPへ移行する理由
SAP IBPへの移行は、APOの保守終了に伴う強制的な移行ではなく、計画プロセスを近代化、最適化するチャンスであると捉えられるべきです。
SAPの戦略的フォーカスは、クラウドソリューションと継続的なイノベーションです。IBPへ移行するユーザーは、SAPの長期的ビジョンと歩調を合わせることにより、計画プロセスの継続的な開発およびサポートを確保できます。
SAP IBPの特長
計画の統合でエンドツーエンドの包括的ビューを提供
さまざまなビジネス機能をカバーするエンドツーエンドの計画を行うためのプラットフォームを提供します。
- 需要計画 – デマンドセンシング、時系列分析、機械学習に基づく予測
- 販売事業計画 – プロセスの自動化、コラボレーション、Microsoft Teamsとの統合
- 在庫計画 – マルチエシェロン在庫最適化、サービスレベル予測
- 制約付き供給計画 – 最適化、有限ヒューリスティック、受注基準の確認、TLB(輸送積載計画)に基づく導入
これにより、業務全体を包括的に把握し、統合されたデータからの情報をもとに意思決定を行うことができます。
ユーザーエクスペリエンスの向上
計画担当者や意思決定者にとってより直感的で使いやすいインタフェースを提供します。ユーザーエクスペリエンスが強化され、ユーザーの効率性と採用率が向上します。
what-if分析 – リアルタイムデータに基づく意思決定
- データや分析結果にリアルタイムでアクセスし、より正確な予測、シナリオ計画、意思決定を行えるため、市場や社内の状況の変化により機敏に対応できます。
- 強力なシナリオ計画およびwhat-if分析機能を使い、異なるビジネスシナリオをシミュレートし、さまざまな要因の影響を評価し、これらの分析から得た洞察をもとに経営判断を下すことができます。これは、SAP APOに比べてより高度でユーザーフレンドリーな機能です。
コラボレーションの強化 – プロセスの自動化
- 部門間のコラボレーションによる計画プロセスを促進することで、組織内のコミュニケーションが改善され、連携、調整がしやすくなります。
- 計画プロセスを合理化し、自動化機能を提供することで、運用効率を向上させ、手作業を減らします。これにより、従業員は付加価値の高い活動や戦略的イニシアチブに集中できるようになります。また、MS Teamsとの統合により、期日に関する通知やアラートをタイムリーに受信できます。
- SAPワークスペースとMS TeamsをSAP IBPプロセスフローと統合することで、異なる部門のチームが連携し、時間内にそれぞれのタスクを完了できます。
スケーラビリティとフレキシビリティ
SAP APOが主にオンプレミスのソリューションであるのに対し、SAP IBPはクラウドベースのソリューションです。つまり、インターネットに接続できればどこからでもアクセスできるため、より高いスケーラビリティ、フレキシビリティ、アクセシビリティが実現します。
他のSAPソリューションとの統合
SAP S/4HANA、SAP ECC、SAP Ariba、SAP SuccessFactorsなどの他のSAPソリューションとの統合機能が改善され、シームレスなデータ交換やエンドツーエンドのビジネスプロセス統合が可能です。
IBP拡張機能
Business Technology Platform(BTP)を使用することで、標準APIを使って追加の拡張機能や非SAPシステムと統合できます。また、リスク管理ツールとも統合も可能です。
SAP IBPの重要ポイント
APOソリューションを直接置き換えるものではない
SAP IBPには、APOが提供するソリューションのうち、実行レイヤーと密接に結びついたソリューションを置き換えるものは含まれません。これらの機能は、S/4ソリューション内に組み込まれています。具体例を次のとおりです。
- 生産計画/詳細計画(PPDS)⇒ ePPDSに置き換え
- Global Available-to-Promise (GATP)⇒ S/4のaATPで対応
- スペアパーツ計画(SPP)⇒ S/4のeSPPで対応
- 輸送計画/配車計画(TP/VS)⇒ S/4のTMに統合
- 拡張倉庫管理(EWM)⇒ S/4に統合
インタフェース
コアインタフェース(CIF)は、受注基準計画をサポートするSAP IBPのリアルタイムインタフェース(RTI)に相当します。時系列基準計画では、ECCまたはS/4HANAから計画データを統合するためのバッチジョブが定期的に実行されます。
SAP IBPの高度な機能
高度な機能として、デマンドセンシング、マルチエシェロン在庫最適化、エンドツーエンドの可視性を提供するコントロールタワー、よりインタラクティブなシナリオ計画、S&OPにおける統計予測のためのAIベースのアルゴリズムなどがあります。
結論と次のステップ
APOからIBPへの移行により、システムのアップグレードだけでなく、目まぐるしく進化する環境に合わせて計画プロセスを適応、変化させる術を手に入れることができます。つまり、イノベーションを活用し、将来に通用するサプライチェーンプロセスを確保できるのです。SAP IBPは、現代のビジネス環境の課題に対応するよう設計された、包括的かつ高度な計画ソリューションです。
APO製品のサポートが終了を迎えるにあたり、SAP IBPへの移行計画を検討する必要があります。今まさに、サプライチェーン計画の未来がここにあります。そして、SAP IBPがその先導役となるでしょう。SAP IBPへの移行で、サプライチェーン管理に革命をもたらしましょう。
お問い合わせ・ご質問
Westernacherのエキスパートまでお気軽にお問い合わせください。お客様固有のニーズを評価たうえでSAP IBPの機能を検討し、シームレスな移行を実現します。