レジリエンス(回復力)には、「困難に耐えるまたは困難から回復する能力」、「物質や物体が元の形状に戻る能力」という意味があります。
レジリエンスという言葉の使用頻度が飛躍的に高まったのは、この100年間で人類の歴史に起こった劇的な変化が理由かもしれません。こうした変化は、自然、人、場所、そしてもちろんビジネスに特に影響を及ぼしました。
1923年から2023年までの「レジリエンス」の使用回数をカウントしたトレンドチャート
(出典:Google Ngram Viewer, https://books.google.com/ngrams/graph?content=resilience&year_start=1923&year_end=2019&corpus=en-2019&smoothing=7&case_insensitive=true)
ここ20年で「サプライチェーンのレジリエンス」という言葉をよく耳にするようになったことにも納得がいきます。 グローバル化に伴う競争の激化や製造のオフショアリングに加え、電子商取引技術によって消費者である私たちが商品やサービスを購入する方法にも変化が生じ、嗜好や需要も常に変動する状況となっています。
さらに、グローバル化した供給源は、パンデミック、戦争や紛争といった地政学的リスク、気候変動など、あらゆる混乱の影響を受けています。 企業は可能な限り、単一の供給源に依存するリスクを回避し、複数の供給源を確保しようとしています。 供給リードタイムを短縮し、可変性を考慮し、増大する輸送費に対応するため、これまでのオフショアリングからニアショアリングへの転換も行なわれています。 また、干ばつや洪水などの自然災害に備え、複数の輸送手段の確保が求められる場合もあります。
パナマ運河の水位低下は、気候変動がいかにサプライチェーンに影響を与えるかを示す最近の例です。年末商戦を迎えるにあたり、全米で配達遅延が発生することも予想されています。
1990年から2019年までの「サプライチェーンのレジリエンス」の使用回数をカウントしたトレンドチャート
(出典:Google Ngram Viewer, https://books.google.com/ngrams/graph?content=supply+chain+resilience&year_start=1990&year_end=2019&corpus=en-2019&smoothing=7&case_insensitive=true)
それでは、企業は現在、そして将来にわたり、こうした混乱にどう対処すればよいのでしょうか。
「計画」がその答えです。計画により、レジリエンスを高めるための機能を導入し、より安定したサプライチェーンを実現する準備を整えることができます。 サプライチェーン管理の短期、中期、長期にわたる確定論的要件を超えて、より広い視野で不確実性や変化に対応できるようになります。 売り上げを堅調に伸ばす業務計画プロセスを推進したり、需要と供給のバランスを取ったり、需要予測プロセスの精度を相対的に改善したり、需要に見合う供給能力を決定したりするだけでは不十分です。
混乱に耐えるためには、内部および外部の変動要因の確率的性質をサプライチェーン計画に組み込む必要があります。 供給計画プロセスにシナリオを導入することで、期待するパフォーマンスを妨げるあらゆる変動要因に対して、サプライチェーンが対処できる可能性を高めることができます。
SAP Integrated Business Planning for Supply Chain(SAP IBP)は、需要計画、在庫計画、販売事業(S&OP)プロセスをサポートするシナリオ計画機能を提供します。 次のようなシナリオ計画機能があります。
- 在庫最適化演算子
- 統計的予測
- S&OP演算子
- S&OP予測消費
在庫計画担当者は、需要、輸送、生産、ベンダー調達、在庫政策変数(需要予測、需要変動、顧客サービスレベル、供給リードタイム、供給リードタイム変動、最大・最小安全在庫など)をカバーする確率的多段階在庫最適化ソリューションを使って、20近くの入力変数をモデル化できます。 複数の顧客サービスレベルに基づくシナリオ例は、顧客サービスレベルと在庫投資の妥協点を決定します。 また、ベンダーの供給リードタイムを短縮するシナリオ例では、在庫削減の可能性を見極めます。
左上:顧客サービスレベル目標 – 製品別安全在庫費用曲線
右上:顧客サービスレベル目標 – 製品別倉庫在庫費用曲線
下:材料・拠点別ベンダーリードタイム短縮 – 安全在庫、サイクル在庫、倉庫在庫
計画担当者は、Microsoft Excel IBPアドインやFioriアプリケーションのPlanner Workspaceなど、SAP IBPの計画ユーザーインタフェースを使用してシナリオを作成し、結果とベースライン計画を比較して潜在的な混乱のレベルを判断し、リソース要件を把握して、混乱回避のための最良の手段を選択することができます。
Westernacherは、S&OPプロセスの在庫バランスにおけるシナリオ設計をお手伝いします。 S&OPチームは、次のプロセス手順を行います。
- サプライチェーンに最も関連性の高いリスク要因を特定する
- リスク要因の影響を判断するシナリオを作成する
- 最も妥当なシナリオ案を選択する
- リスクの影響を評価する
- リスクを軽減し、その結果サプライチェーンのレジリエンスを高めるような計画を提案する
要因の特定
シナリオの
作成
妥当な
シナリオ案の説明
リスクと影響の評価
決定案の作成
SAP IBPを活用した計画により、サプライチェーンに影響を及ぼす内部および外部の変動要因を包括的に網羅することで、サプライチェーン全体のレジリエンスを強化することができるのです。
詳しくは、弊社までぜひお問い合わせください。