SAP IBPは、時系列計画と受注基準計画を1つのモデルに統合した「統合計画範囲(Harmonized Planning Area:HPA)」(I_SAPIBP2)の導入により大きく進化しました。HPAは、計画プロセスを簡素化・効率化するために設計された強化機能で、時系列計画と受注基準計画を1つの環境に統合します。
SAP IBPにはこれまで、2つ別々の計画範囲が存在していました。
- 時系列計画(需要、在庫、S&OPなど)
- 受注基準計画(応答、供給など)
HPAによりこれらが統合され、計画担当者は次のことができるようになります。
- 両方のタイプのデータ(予測と受注など)を1つの計画範囲で扱う
- サプライチェーン全体でのエンドツーエンドの可視化と計画を実現する
次のような利点が得られます。
- エンドツーエンドの計画プロセスが効率化される
- 今後HPAに新機能が実装され、従来の時系列および受注基準の計画範囲には重要なアップデートのみが適用される
- 計画範囲とSAP ERP間の複雑なデータ複製・統合の必要がなくなる
- S&OPプロセスから開始して作業計画へ展開するなど、スムーズな導入が実現する
- レポート機能が改善され、計画担当者の生産性が向上する
HPAは、SAP IBPの導入前・導入中・運用中のいずれの段階においても、さまざまな利点をもたらします。
SAP IBP導入前:
- SAPは、時系列計画または受注基準計画を目的として新たにSAP IBPを導入する場合、まずHPAから開始することを推奨している
- 共通の統合計画プロセスの利点を早い段階で享受でき、後でI_SAPIBP2へ移行する手間を省くことができる
SAP IBP導入中:
- HPAの新機能や利点を考慮し、現状と比較する
- 時系列計画または受注基準計画の導入中であれば、それを継続しつつHPAも検討する
- 計画範囲やSAP ERP、その他外部システムで過剰な統合やカスタマイズを行うと、将来的にHPAへ移行する場合、これらの修正・再構築が必要になる可能性がある
SAP IBP運用中:
- SAPはロードマップの一環として(2026年下半期)、すでにSAP IBPを導入しているユーザーがHPAに移行できるよう、移行ツールの提供を予定している
- 現時点であまり大きな変更を行わず、将来の移行に向けて次のような準備を行う:
- HPAの機能や利点を評価・検討する
- サンドボックス環境にHPAを設定して試してみる
- 設定が必要な統合、または除外すべき統合を特定する
- 関係者と連携し、統合計画プロセスの検討を開始する
