「暗黒」の倉庫（ダークウェアハウス）とは何でしょうか。多くの人は、省エネのために「照明を消した」施設のことだと考えるでしょう。しかし実際には、もう少し「ダークな」意味合いを含んでいます。ダークウェアハウスとは、あらゆるマテリアルハンドリングとそれに関連するプロセスの完全なる自動化により、人間の労働力を必要としない倉庫です。人間とは異なり、自律走行搬送ロボット（AGV/AMR）は寒暖の極端な環境で照明なしに稼働できるため、運用コストの削減につながります。
手作業によるピッキング作業を改善する自動化ソリューションは約40万～80万ポンド（約7,000万～1億4,000万円）、完全自動化ソリューションは最大2,000万ポンド（約35億円）*、そして中間的な「半自動化オプション」が多数存在するなど、倉庫の完全自動化には莫大な先行投資が必要です。こうしたコストは、小規模プロバイダーにとってはかなりの負担です。実際に、自動化倉庫は全体のわずか5％**と推定されています。大半の企業は、必要なインフラを確保できる専用の施設を備えたグリーンフィールドサイトで自動化を実現しようとするでしょう。また、プロセスが複雑であるほど自動化のコストがかさみます。したがって、毎日同じ種類の動きを大量に行うエリアや、人間の作業員が短時間しか滞在できない極端な温度で保管する倉庫（冷凍庫など）に自動化プロセスを導入するケースがほとんどです。とは言え、AIや自動化MHEはかなり速いスピードで進化しており、そう遠くない将来、倉庫自動化にかかる費用も手の届きやすいものになるかもしれません。
Zebra Technologiesの調査によると、「意思決定者の61％がテクノロジーによる倉庫内の部分的な自動化または労働力の強化を計画しており、回答者の4分の3が最適な業務バランスを保つには人間の関与が必要だと考えています。そのうちの39％が部分的な自動化（ある程度の人間の関与あり）を、34％が労働力の強化（作業員がデバイスを装備）を支持しています。」***
2020年の出来事を振り返ると、混乱の最中、通常どおり稼働していたのは完全に自動化された施設でした。これを受け、サプライチェーンの混乱から自社を守るための対策を強化する企業が増えています。
もちろん、自動化にも温度や条件の限界はありますが、大半は自動化された設備が毎日休みなく稼働し、長時間シフトをこなし、必要に応じて自ら持ち場を離れて充電し、バッテリーが充電されると再び持ち場に戻ります。照明や空調も必要としません。
運用コストが上昇し、労働者の確保が難しくなる中、これは実に魅力的な話に聞こえますが、本当に現実的なものなのでしょうか。人間の作業員はロボットよりもはるかに多才であり、問題を事前に察知する能力があります。自動化倉庫でも、依然として何らかの形で人間の関与が必要な場合が多々あります。固定式や移動式のさまざまなオプションが利用可能とは言え、ほとんどは限られた知能を必要とする作業しか処理できないのが現状で、スキャンに失敗する、製品の積み付けが悪い、製品が紛失するなどの問題が発生しています。標準プロセスから逸脱する問題はすべて、プロセスが停止しないよう、依然として人間の介入が必要です。
さて、ダークウェアハウスは本当に実現可能なのでしょうか。
